データマイグレーションとは?| 定義と一般的なプロセス

データマイグレーションとは、デジタル情報を異なる場所(クラウドストレージなど)、アプリケーション、データベース、またはコンピューティング環境に移行するプロセスです。

学習目的

この記事を読み終えると、以下のことができるようになります。

  • データマイグレーションの定義
  • データマイグレーションの5つの種類を説明する
  • データマイグレーション計画の内容を探る
  • データマイグレーションの基本的なプロセスを説明する

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データマイグレーションとは?

データマイグレーションとは、あるコンピューティング環境から別のコンピューティング環境に既存のデータを選択、準備、移動するプロセスです。データマイグレーションは、アプリケーション、ストレージシステム、データベース、データセンター、ビジネスプロセス間で行うことができます。

データマイグレーションの目標やプロセスは組織ごとに異なります。コスト、時期、技術的要件、業務への影響、データ損失の可能性、コンプライアンス要件など、多くの要素を考慮する必要があります。

企業がデータマイグレーションを行う理由は?

企業がデータマイグレーションプロジェクトを実施する理由には、次のようなものがあります:

  • メディア、ストレージ、その他のIT機器のコストの削減
  • ストレージ容量の拡大・拡張
  • お客様のWebサイトやデジタル体験の向上
  • データ管理の一元化と簡素化
  • アプリケーションのパフォーマンスの高速化
  • 買収企業のデータ統合
  • 新しいコンプライアンスやセキュリティの要件への対応
  • データ分析・レポート機能の強化

例えば、新しいコンピュータを購入した場合、通常、最新版のソフトウェアをインストールし、古いコンピュータから最も重要なファイルだけをコピーすることが好ましいとされています。古いソフトウェアやファイルを追加することは、不必要にストレージスペースを占有し、新しいデバイスの速度を低下させることになります。同様に、データマイグレーションを効率的に行うことで、新システムが適切に浄化、抽出、変換されたデータを利用することが保証されます。

データマイグレーションは、 デジタルトランスフォーメーション (デジタル技術を利用して事業における業務内容やプロセスを近代化すること)の重要な実現手段となり得ます。これは、クラウドマイグレーションと連携して行われることが多くありますが、特に、古いデータや破損したデータが組織の新しいクラウドインフラに移行されないようにすることが重要です。

データマイグレーションの主な種類は?

データセンターには、業務プロセスやワークフローを実行するためのソフトウェアアプリケーションで使用される、ファイルやデータベースが保存されています。そのため、データマイグレーションは一般的に5つのタイプに分類されます:

  1. ストレージマイグレーション:ある記憶媒体から別の記憶媒体へデータを移行します。物理的なメディア形式(紙からデジタルファイルやハードディスクドライブなどへ)を変更したり、オンプレミスのストレージからクラウドストレージへと変更することがあります。データは、複数のクラウドストレージシステム間で移行することも可能です。ストレージの移行後は、データそのものは変わりませんが、データへのアクセス方法が変わります。
  2. アプリケーションマイグレーション:ソフトウェアアプリケーションを、あるコンピューティング環境から別のコンピューティング環境に移行します。これには、アプリケーションプログラムのオンプレミスサーバーからクラウド環境への移行、クラウド間の移行(例:AWS から Microsoft Azure)、またはアプリケーションのアップグレードと古いアプリケーションの廃棄が含まれます。すべてのアプリケーションには固有のデータモデルがあるため、アプリケーションの移行中にデータの形式(エンドユーザーへの表示方法)が変更されることがあります。
  3. ビジネスプロセスマイグレーション:人間が操作してお客様向けのサービスを生み出すアプリケーションやデータベース(CRMやERPプラットフォームなど)を移行します。ビジネスプロセスマイグレーションは、通常、企業の合併、買収、再編を契機として行われます。
  4. データベースマイグレーション:スキーママイグレーションとも呼ばれることがあり、2つ以上のデータベース間でデータを移行します。データベースは、Oracle、MySQL、PostgreSQLなどのデータベース管理システム(DBMS)で管理されているものを指し、データベースマイグレーションは、あるDBMSから別のDBMSへの移行や、新しいDBMSのバージョンへのアップグレードを意味します。
  5. データセンターマイグレーション:あるデータセンターから別の場所や運用環境に設備を移すことを指します。データセンターは、保存用、検索用、配布用、アーカイブ用のデータやアプリケーションなどのIT資産を含むため、データセンターマイグレーションは特に複雑です。データセンターマイグレーションには、組織の目的に応じて、物理的なハードウェア、 仮想マシン、クラウドソリューションの全面的な変更が含まれることがあります。

データマイグレーションの作業はどのようなものか?

どの種類のデータマイグレーションにも対応する「万能」プロセスは存在しません。しかし、完全なデータマイグレーション計画には、多くのコンポーネントやステージからなる3つのフェーズで構成されています。

  1. マイグレーションの前処理
  2. マイグレーション(「本番作業」)
  3. マイグレーションの後処理(テスト/監査)

マイグレーションの前処理(計画/ディスカバリー)

マイグレーションの前処理は、マイグレーションをスムーズに進めるための最初の計画段階で、リスクを最小限に抑えることを目的としています。このフェーズでは、データマイグレーションチームは、プロジェクトの目的、範囲、必要な人員配置/リソース、および重要な要件を設定します。

マイグレーションの前処理のタスクには、以下のようなものがあります(ただし、これらに限定されるものではありません):

  • データの移行元、移行先、フォーマットの評価(プロファイリング)
  • データの品質、異常、重複を検査する
  • 影響を受けるユーザーと潜在的な混乱を特定する
  • ハードウェア要件、ソフトウェア要件、セキュリティ要件を定義する
  • 必要なコスト、人員、データマイグレーションツールを確定する
  • マイグレーション完了までのタイムラインを設定する
  • データのクレンジングまたは再フォーマットを行う
  • データバックアップの実施、陳腐化したデータの処理方法を決める
  • 具体的なアプローチを決定する(次項に記載)
  • リスク軽減策を作成する、関係者への説明会を計画する

マイグレーション(「本番作業」)

計画を作成し、適切な権限が確保され、すべてのデータの移行先のシステムへの移行準備が整ったら、実際のデータマイグレーションを開始します。「本番作業」には、以下の内容が含まれます:

  • 必要な権限や設定を読み込む
  • 本番環境のミラー環境で移行テストを行う
  • データマイグレーション方針とセキュリティ規則を実装する
  • テストを実行して新システムのデータが正確であることを確認する
  • マイグレーションによる不具合を修正する
アプリケーションのクラウドへの移行には、リホスト(「リフト&シフト」とも呼ばれる)、リアーキテクト、リプラットフォームなど、いくつかの具体的な戦略が存在します。詳細については「クラウドマイグレーションとは?」を参照してください。

マイグレーションの後処理(検証)

データマイグレーションは、「スイッチを入れた」だけで完了するわけではありません。マイグレーションの結果に対する監査と検証を行い、すべてが正しく移行され、記録されたことを確認する必要があります。

移行後の監査が成功したと判断されれば、旧システムを廃止することができます。

一般的なデータマイグレーションのアプローチ

データマイグレーションには、あるシステムを別のシステムに移行するものや、2つのシステムを一つの全く新しいシステムに統合するものがあります。どちらの戦略を選択する場合も、一般的なデータマイグレーションのアプローチには2つのものがあります。

「ビッグバン」マイグレーション:「ビッグバン」データマイグレーションでは、旧システムから新システムへのデータセット全体の移行を、1つのフェーズで行います。このマイグレーションは、通常、計画的なダウンタイム期間中(週末や休日など)に行われます。

長所:

  • 作業時間が短い
  • ユーザーのマイグレーション前後のシステム間の行き来が不要
  • マイグレーション前後のシステムの同時メンテナンスが不要なため、コストダウンが期待できる

短所:

  • 企画・開発の初期段階、テスト段階での負担が増える
  • ユーザーが新システムに慣れるまでの時間が少ない
  • システムの一部で障害が発生すると、他の部分でも問題が発生し、旧システムへの完全なロールバックが必要になる

「トリクルフィード」マイグレーション:システムを停止できないグローバル企業や重要インフラプロバイダーは、「トリクルフィード」と呼ばれるデータマイグレーション手法を選択することができます。これは段階的なアプローチで、データを小さな単位でパッケージ化して移行します。

長所:

  • 事実上どの時点でも実施可能
  • エンドユーザーが新システムを学び、慣れるための時間を確保できる
  • システムの一部で障害が発生しても、組織全体への影響が少ない

短所:

  • 組織全体での同期の必要性が増す
  • 新旧のシステム間の切り替えが発生し、エンドユーザーが混乱する可能性がある
  • 新旧両方のシステムを一定期間稼働させることで、コストが上昇する可能性がある

データマイグレーションとデータインテグレーションの比較

「データインテグレーション」という用語は、データマイグレーションと同じ意味で使われることがありますが、両者は別物です。一度しか行われないデータマイグレーションプロジェクトとは異なり、データインテグレーションは、データの漸進的な変更を伴う継続的なプロセスです。また、データマイグレーションとは異なり、データインテグレーションは、散在するデータを1つの統一されたビューにまとめることができます。

データマイグレーションは、データインテグレーションの取り組みにおいて重要なマイルストーンとなり得ます。例えば、ある企業が大量の非構造化データ(音楽、ビデオ、画像など)を新しいオブジェクトストレージサービスに移行した場合も、そのデータを別の場所にホストされているメディア処理ツールで統合することができます。

Cloudflareはデータマイグレーションを支援していますか?

Cloudflare R2は、AWS S3互換のグローバル分散型オブジェクトストレージで、開発者は大量の非構造化データをエグレス料金なしで保存することができます。R2 Migrator(別名:Super Slurper)を使用することで、他のクラウドプロバイダーに保存されているデータオブジェクトを、選択したR2のバケットに迅速かつ容易に移行することができます。

エッジのSQLデータベースであるCloudflare D1を使用することで、開発者は既存のSQLiteテーブルとそのデータを直接インポートすることも可能です。

Cloudflareの開発者プラットフォームについての詳細はこちらを参照してください。