AIの歴史とは?

現在の最先端のAIモデルは、数十年前に行われた発見に基づいて構築されています。AIの歴史は、最初にデジタルコンピュータが作られる前まで遡ります。

学習目的

この記事を読み終えると、以下のことができるようになります。

  • AI開発における主な進歩を特定する
  • アラン・チューリング、フランク・ローセンブラット、ジェオフレイ・ヒントンといった発明者やイノベーターが長年にわたってAIに行ってきた貢献内容を理解する
  • 今日のAIクラウドをもたらした開発を挙げる

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AIの歴史とは?

人工知能(AI)とは、機械(多くの場合、具体的にはコンピュータ)が、人間の認知プロセス、問題解決能力、行動を模倣する能力のことです。現在、AIには、予測AI自然言語処理から大規模言語モデル(LLM)エージェンティックAIまで、さまざまな能力が含まれます。

AIには多くの先駆者が存在し、古代の自動機械から初期のコンピュータまでさかのぼることができます。そして、今日の最も高度なモデルは、何十年も前に開発された理論とアルゴリズムに基づいています。

AIの歴史における主要な出来事:タイムライン

「人工知能」という用語は1955年に創設されたものですが、AIの開発にとって重要な出来事は何世紀も前にさかのぼります。

20世紀以前

  • 紀元前400年頃:古代ギリシャの記録によると、タレントゥムのアルキュタスが羽ばたいて飛ぶことができる木製のハトを作製。
  • 1495年頃:レオナルド・ダ・ヴィンチが、ドイツの騎士のような姿をした自動機械の詳細な設計図を作成し、実際に製作した可能性もある(ただし、もし作られていたとしても現代には残っていない)。
  • 1560年頃:スペイン国王フェリペ2世が時計職人フアネロ・トゥリアーノに、フランシスコ会修道士ディエゴ・デ・アルカラ(後に聖ディエゴとして列聖された)を模した自動人形の製作を依頼。ゼンマイ仕掛けで駆動し、基本的な人間の動作やジェスチャーを模倣した。
  • 1764年~1770年:Canard Digérateur(「消化するアヒル」)とAutomaton Chess Player(「帰化仕掛けのトルコ人」)として知られる自動機械が大衆を喜ばせた。どちらも後に不正であることが判明するものの、オートメーションの可能性に対する人々の想像を広げた。
  • 1822年:チャールズ・バベッジが「階差機関」という機械式計算機を完成。これはコンピュータの初期の前身とされる。

1900年~1973年

  • 1914年:数学者で発明家のレオナルド・トーレス・イ・ケベドが、「El Ajedrecista(チェスプレイヤー)」を発表。これは特定の条件下で人間のプレイヤーに勝つことができる自動チェスマシンであった。
  • 1943年:神経生理学者ウォーレン・マカロックと数学者ウォルター・ピッツが論文「A Logical Calculus of the Ideas Imminent in Nervous Activity(神経活動において差し迫った思考の論理算法)」を発表し、ニューロンの数学的記述を提案。この論文は人工ニューラルネットワーク構築への重要な一歩となった。
  • 1945年:初のデジタルコンピュータ「ENIAC」が完成。
  • 1949年:心理学者ドナルド・ヘッブが著書『The Organization of Behavior(行動の組織化)』を出版し、ニューラルネットワークの発展に大きな影響を与えた。
  • 1950年:著名な数学者・コンピュータ科学者アラン・チューリングが論文「Computing Machinery and Intelligence(計算する機械と知性)」を発表し、機械が思考できるかという問いを考察。この論文では、コンピュータ化された知能が人間の知能と区別できなくなったかどうかを判断するための有名な「チューリングテスト」について説明している。
  • 1951年:ディーン・エドマンズとマーヴィン・ミンスキーが最初の人工ニューラルネットワーク「SNARC(Stochastic Neural Analog Reinforcement Calculator)」を構築。ニューロンユニットは40個のみ。
  • 1955年:コンピュータ科学者のジョン・マッカーシーの主催するワークショップで「人工知能(Artificial Intelligence)」という用語が誕生。
  • 1957年:心理学者・コンピュータ科学者フランク・ローゼンブラットが初期の人工ニューラルネットワーク「パーセプトロン」を開発。
  • 1959年:スタンフォード大学のバーナード・ウィドロウとマルシアン・ホフが、電話回線のエコー除去に使用された初の実用ニューラルネットワーク「MADALINE(Multiple ADAptive LINear Elements)」を開発。
  • 1966年:コンピュータ科学者のジョセフ・ワイゼンバウムが、初のチャットボットとされる「ELIZA」プログラムを公開(ただし、現在の基準では単純なパターンマッチングアルゴリズムによるもの)。
  • 1969年:マーヴィン・ミンスキーとシーモア・パパートが著書『Perceptrons: An Introduction to Computational Geometry(パーセプトロン:計算幾何学のはじまり)』を出版し、ローゼンブラットが開発したパーセプトロンニューラルネットワークを解説。同時にパーセプトロンの限界についても議論しており、これが後年、AI研究への熱意や資金提供を弱めたとみなされることもある。

AI冬の時代とそこからの復活:1973年~2000年

  • 1973年:最初の「AIの冬の時代」が始まる。英国の科学研究会議の報告書で、AI分野の研究が期待された成果を上げていないと判断され、英国のAI研究資金が削減される。この影響で、その後の10年間、AI研究は減退。
  • 1980年:人工知能の進歩協会(AAAI)が初のカンファレンスを開催。AI研究への関心が再び高まり始める。
  • 1982年:カリフォルニア工科大学のジョン・ホップフィールドが、人工ニューロン間の双方向接続(それ以前は単方向接続のみ)を用いる論文を全米科学アカデミーに発表。また、日本が第五世代コンピュータ(FGCS)プロジェクトを立ち上げ、AI研究への資金が増加。
  • 1987年:進展の停滞を理由に、投資が最小限に抑えられる「第二のAIの冬の時代」が始まる。
  • 1995年:リチャード・ウォレスが、1960年代のELIZAチャットボットを基盤としたチャットボット「A.L.I.C.E.」を開発。
  • 1997年:IBMのスーパーコンピュータ「ディープ・ブルー」が、6局のチェスマッチで世界チャンピオンのガルリ・カスパロフを破る。

21世紀:AIブーム到来

  • 2002年:全自律型の機能を備えた初期の家庭用製品の1つであるルンバが発売される。
  • 2007年:コンピュータ科学者ジェフリー・ヒントンが、ディープラーニングの発展にとって画期的な論文「Learning Multiple Layers of Representation(多層表現の学習)」を発表。
  • 2009年:研究者ラジャト・ライナ、アナンド・マダヴァン、アンドリュー・ングが「Large-scale Deep Unsupervised Learning using Graphics Processors(グラフィックプロセッサを使用した大規模教師なし深層学習)」という論文を発表し、GPUがCPUより機械学習に適していることを提案。これ以降、GPUへの移行により、それまでにない強力なAIモデルの開発が可能になる。
  • 2011年:IBMの自然言語処理システム「ワトソン」がアメリカのクイズ番組『Jeopardy!』に出場し優勝。また同年、AppleがSiriを発売し、初の広く普及したバーチャルアシスタントとなる。
  • 2012年:Googleの研究者ジェフ・ディーンとアンドリュー・ンが、ラベル付けされていない画像のみを使ってニューラルネットワークに猫を認識させることに成功。この頃から「AIブーム」が始まる。
  • 2016年:GoogleのAlphaGoが囲碁のプロ棋士イ・セドルを破る。
  • 2017年:Googleがトランスフォーマー型ニューラルネットワークのフレームワークを提案。このアーキテクチャが後の大規模言語モデル(LLM)の開発の基盤となる。
  • 2020年:OpenAIが最初のLLMの1つであるGPT-3をローンチ。
  • 2021年:Googleが、言語の理解と生成の両方が可能なAI駆動型検索アルゴリズム「Multitask Unified Model(MUM)」を発表。
  • 2022年:ChatGPTのバージョン4.0が一般公開され、AIの能力に対する世界の認識を一変させる。他にもBard、Llama、Bing Chat、CopilotといったLLMが次々に登場。

AIの「第3の波」とは?

近年、ハードウェアの一連のブレークスルーと進歩を基盤として、数十年にわたる停滞とAIの冬を経て、AI開発は加速しています。業界ウォッチャーは、このAIブームの中で急速に主流化した3つの「波」、すなわち予測AI生成AI(LLMなど)、そしてエージェンティックAIを特定しました。

エージェンティックAIは、明確な指示がなくても、特定のプロンプトベースの文脈を超えて、自律的にタスクを実行できるコンピュータプログラムの作成を可能にします。AIの「エージェント」は、自ら意思決定を行い、過去の経験から学び、それに応じて行動を適応させることができます。その結果、AIエージェントは独立して、あるいはごくわずかな人間の介入で作業を遂行できるのです。

AIにどのような未来が待っているか?

近年の新たな発見やより高性能なハードウェアによって、AIはこれまでにない能力を獲得してきました。AIの歴史は今も続いており、将来にはさらに刺激的な発展が待っているかもしれません。

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出典:

  • https://cs.stanford.edu/people/eroberts/courses/soco/projects/neural-networks/History/history1.html
  • https://www.history.com/articles/7-early-robots-and-automatons
  • https://www.cell.com/trends/cognitive-sciences/fulltext/S1364-6613(07)00217-3
  • https://www.historyofinformation.com/detail.php?entryid=782
  • https://www.historyofinformation.com/detail.php?id=4137
  • https://www.techtarget.com/searchenterpriseai/definition/AI-winter
  • https://aaai.org/conference/aaai/aaai80/
  • https://blog.google/products/search/introducing-mum/
  • https://news.harvard.edu/gazette/story/2012/09/alan-turing-at-100/